世界でたった一人だけ
「あっ!小雪ぃ!…夏井来た」
夏井とは、あたしの命令でクラスからハミられた、地味な女子。
下の名前は「れみ」。かわいい名前とは反対の、期待外れな顔。
あたしは、それだけで彼女をいじめている。
あたしは沙里奈とメアド交換を済ませると、夏井の元へと駆け寄った。
「おはよ~夏井さん。ちょうど良かったわ。あたしと沙里奈に、カフェオレ買ってきてよ」
「え…でも、授業始まっちゃ…」
「走れば間に合うだろ―が!早くしろよ、グズ」
あたしがキツイ言葉で夏井を罵れば罵るほど、夏井の顔色は日々暗くなっていった。
なのに、夏井は学校を休んだりはしない。あたしたちに反抗したりもしない。
だから、最近は正直つまらなくなってきていた。
夏井は、教室を出ようとした。
「ぷっ。変な歩き方」
別にそこまで変なわけじゃないけど、試しに罵った。
夏井は、振り返りもせずに走って教室を飛び出した。
「きゃはは!何あいつ。つかまじ暗いよねー。『れみ』とか、超ウケル!」
沙里奈が笑った。
周りのみんなは、苦笑い。
なんだ。そんなに悪いことじゃないじゃん。
ただの遊びだもんね。
…これって、いじめに入る?