世界でたった一人だけ
今まで何も言わなかった沙里奈が、夏井に向かって言った。
夏井は沙里奈に睨まれ、体を小さく跳ねさせた。
「あんた、バカ?誰が150ml買ってこいっつったよ!あたしさぁー150mlも飲めないんだよねー。…小雪ぃいるぅ?」
わざとらしくクスクス笑う沙里奈の意図が読めた。
あたしは、その沙里奈の考えにのることにした。
「…いらなーい」
「だってさ、夏井さん。あたし、飲む気なくしたから夏井さんにあげるね!」
沙里奈はそう言うと、ペットボトルのキャップを開けて夏井の頭上に移動した。
そして、ゆっくりと下へ傾けた。
「きゃーごめーん!手ぇ滑っちゃったぁ!」
きゃははっと笑う沙里奈に便乗して、他のみんなもクスクスと笑い出した。
夏井はその雰囲気に耐えられなくなったのか、教室を飛び出した。
―――――その時。
授業の始まりを伝える本鈴が鳴った。