さんかく、しかく。
あたしとアタシ
「‥あはは、わかってるよ。
うん、それじゃあまた‥はーい。」


シチューの匂いの漂うキッチンで、二時間近く続いた昔話が終わりを迎える。
ふと目に入った液晶画面のデジタル時計が、夕方4時半を知らせた。

あたしは頭だけ換気扇の方を向くと、煙草に火をつける。

あたし達の昔話を聞いていたお母さんが、あたしの目の前のテーブルに冷たい麦茶の入ったコップを差し出すと、向かいの椅子に腰を降ろした。


「近頃は彼氏の元カノに恋愛相談するのが普通なの?」

煙草に火をつけながら、そう茶化すように笑って聞いてくる。

「いや、そういうわけでもないでしょ。
あたし達はあんなことがあったから、特別だよ。」

納得したように何度か頷くお母さんの横顔を見て、ふと皺が増えていることに気付いた。
皺だけじゃない、白髪も。

「お母さん、皺増えたね。」

そう言って、あたしは思い返していた。
この三年間、あたしが迷惑をかけた数だけ刻まれた皺と、心配をかけた数だけ増えた白髪‥
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