ばうんてぃ☆はうんど・vol.2~鷹の目の向こうに《改訂版》
部屋のドアを開けると、あかりはテーブルいっぱいに乗せられたサンドイッチだのパスタだのベーグルだの、おそらくはルームサービスでオーダーしたであろう食い物をむさぼっていた。
「またこんなにオーダーしやがって……」
「頭使ったから糖分補給してんの。仕事はガチでやったんだから、文句ないでしょ?」
「ああそっか。さんきゅな。さすが早いな」
「天才あかりちゃんなめないでよね。我ながら自分の才能に震えるわー。もごもご」
120分前まであんだけふてくされてたくせに。
「けどお前、金足りてんのか? 毎度毎度こんなに使って」
テーブルの上のベーグルサンドを一つつまみながら言う。
「めっちゃ余裕。これ全部ジルのカードで落としてるし」
「なんだそっか。それなら……って、ゔお゙おおおおい!!」
ベーグルを吹き出しながら怒鳴る。
「きったなー! この攻撃はマジないわー!」
「別に攻撃したわけじゃねえ! なに勝手に人のカード使ってんだてめーわ! てか俺カード持って出かけたのに、どうやったんだ、ええ?!」
「そんなん、いくらでもやりようあんぢゃん。そんくらい、あかりちゃんに出来ないと思ってんの?」
憎たらしい笑みを浮かべてのたまいやがった、このガキ。
「人にばっか面倒押しつけるから。軽い仕返しでしょ。器ちっさ」
俺は無言でホルスターに手をかける。
あかりも忠吉に手をかけ、いつでも抜刀できる構え。
「やめろ二人とも」
ディルクが間に割って入り、俺達を制した。
「ウィリスの情報が集まったのなら、今すぐ行動を起こすべきだ。こんなところで遊んでいる場合ではない」
確かにその通りだ。王はいつ動くかわかんねえんだからな。
俺は無言で手をおろす。
あかりも『ちっ』などと舌打ちして、忠吉から手を離した。
「よし、では早速準備をして出かけよう」
俺はあかりに、
「命拾いしたな」
「あんたこそね」
「次があると思うなよ」
「そっちこそ。夜歩くときはケツの穴に気ぃつけな」
『クーッククク……!』
ディルクは眉間を押さえて頭を振っていた。
 
俺達が仕事を始めたのは、日が沈みかけてきた時間帯だった。
実にやりにくい仕事だ。
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