ばうんてぃ☆はうんど・vol.2~鷹の目の向こうに《改訂版》
俺の言葉を聞いたディルクは、少し考えるそぶりを見せ、
「わかった。リーダーはあくまでジルだ。ジルの判断に任せよう」
「おっけーっす」
あかりも乗ってきた。
「そっか。それなら……」
しばし考えを巡らせ、
「ネバダ」
『ネバダ?』
二人が聞き返す。
「そう、ネバダだ。てかベガス。ベガス行ってちょちょいと儲けて、ついでに遊び倒さねえか?」
タバコにも寛大だしな。
「マジイケてる。あたし的にアリよりのアリ」
「ディルクは?」
いつもならこの相棒は、この手のノープランには反対するのだが……
「あまり関心はしない――が、たまには良いだろう」
珍しく賛成した。
「おっし! んじゃ早速、西海岸目指してぶっ飛ばすぜ!」
「うぇーい!」
コクピットへ向かいかけ――
「ディルク」
「何だ?」
キャビンへ降りかけていた相棒に声をかける。
「あーその、なんだ。王との会話、聞こえてたろ?」
頭の後ろをかきながら質問する。
「ああ、聞こえていた」
「だよな。でよ、俺の過去のことなんだが……」
「別に話す必要はない」
背中を向けたまま、いつも通りの落ち着いた声音で答える。
「その時が来たら話してくれれば良い。お前の中の『その時』がな」
言って、キャビンへ降りて行った。
全く。俺には出来すぎた相棒だぜ。ありがとよ。
舵を握る。慣れたステンレスの感触。レーダーとGPSで位置を確認。オートクルーズ設定。超電導推進起動。
「うし。行くぜ! 夢が叶う街、ラスベガス!」
「イカサマは禁止だぞ」
「あたしベガス名物バフェィ、制覇するー!」
 
キャビンから聞こえた二人の声が、なぜか耳に心地良かった。
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