ばうんてぃ☆はうんど・vol.2~鷹の目の向こうに《改訂版》
あかりは目の前に皿の山脈を並べて、顔も見えねえ。デザートに、タライみたいなバカでかい器に盛ったチョコレートサンデーを食ってる。
ディルクはソーセージ盛りとパスタを一皿ずつ。こいつはいつも小食だ。
とりあえず一段落したようなので、
「あかり。アイス食ってるとこ悪いけどよ」
「悪いと思うんなら、言わないで欲しいんだけど。もごもご」
顔が見えない分、余計にムカつく。
「あえて言おう。次のターゲットを探して欲しいと」
「てか無理」
「何が無理なんだよ」
「アイスおかわり」
皿の壁の向こうから器を差し出してきた。
「俺に取って来いってか。てかもう全部食ったのか?!」
「ちょー余裕」
「『ちょー余裕』じゃねえよ、全く……」
仕方なく取って来てやった。
「ほらよ」
「ありがとうパパ大好きガチで」
「誰がパパだ」
思いっきり棒読みじゃねえか。
「まるでコントだな」
珍しくディルクがツッコんできた。
「ほら。アイス取って来てやったんだから、次のターゲット探せよ」
「マジうるさいんだから。これだからおやぢはさあ……」
ぶつぶつ言いながら、空になった器を皿の壁の上に重ねる。
「おやぢじゃねえよ。俺はまだ20代だ。てか食うの早っ!」
「だからちょー余裕。さて……」
いつものタブレットを取り出し、テーブルの上に乗せペタペタやり始めた。
「なるべく近くが良いよねー」
「そだな。できればこのまま東海岸でもう一仕事こなしたいが」
「うーんとねー……おお?!」
突然おかしな声をあげる。
「なんだよ。なんかいたか?」
「マジえっぐ。久々の大物。7000万だって」
『何?!』
俺とディルク、二人であかりの横からディスプレイを覗き込む。
「ち、ちょっと。あんま近づかないでよ。ちょー酒臭いんですけど。マジ金取るよ?」
ガキの抗議はしっかり無視して、ターゲットを確認する。
一般的な懸賞金の額は、日本円にして数百万から数千万くらいが相場だ。犯罪の割に安過ぎるとの声もあるが、ICPOも国連も限られた予算の中で数多くの世界中の犯罪者に対応しなければならないのだから、この辺りが妥当な線だと俺は思う。
< 6 / 51 >

この作品をシェア

pagetop