イジワルだけど
「なーに、ボケーっとアホ面しちゃってるの」

章は彩未の白くて丸いほっぺたをシャープペンシルでつついた。

「わっ。何すんの! 痛いじゃない!」

「優しくつついて上げたん痛いはずないよ」

シャープペンシルを机の上に置くと覗きこむよいに彩未の顔にぬっと近づく。

近い。彩未はそう思った。それに、変な顔になってないか気になった。

「な、何よ」

「君さ、誰か好きな奴いないの?」

先ほどは「俺の事が好きだろう〜?」なんて問い詰めてたのに今度はなんだ。好きな奴がいるかなんて。

「いるはずないでしょう。顔、どいてよ。作業できないじゃない」

「やだ。て言うか、君って作業してないじゃん」

「仕方ないでしょ。白木の方がこういうのは得意なんだから」

彩未はデザインや長時間の作業が苦手だ。なので、勉強は短期集中形だったりする。ちなみに料理も苦手だったりする。対して章はデザインや長時間の作業が得意中の得意なのて章一人が新聞作りをやっているのだ。彩未が「私も手伝おうか?」と言っても章は「いや、君はだからね。足手まといになるだけだよ」と言い断る。

「で、好きな奴、本当にいないのわけ?」

「だ、だから、いないって言ってるでしょうが!」

「本当にいないのか。面白くないなあ」

さも面白くないという顔をしながら章は彩未から離れていった。

「何が面白くないよ。私に好きな人がいたら面白いわけ?」

章は数秒ほど黙り込むと「そうだなあ」と言い、

「たぶん、面白いかもしれない」

と真顔で答えた。
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