蟻の集団*スケート
朝のワンシーンに恋?
 今年は、例年なら残暑と呼ばれる時なのに、気温40度を越える日が続いていた。

 40度といえば、体温よりも、お風呂よりも暑い日本になってしまったということになる。

 どう考えても、地球が悲鳴を上げているようだ。

 そんな通勤の朝、地下鉄の駅から地上に出た。

 冷えた体が急に温められて、頭が「ぼーっ」となりながらも、八重洲通りを歩き出した。

 しばらく歩くと、向こうの方から何かを振りながら近づくものに気づいた。

 しかし、歩道を歩く集団は誰も気づかない。

 みんな同じ方向に向かって蟻のように、ぞろぞろ一心不乱に歩いている。

さらに、歩道の右側は片側三車線の幹線道路で、通勤時間帯ということもあるのか、たくさんの車も歩道と同じような行列をつくって走っている。

 大きな交差点で信号が赤になった時、それは走ってきた。

 車列に逆らってくるものがあるとは考えないから、体の方向は人の流れを崩さないようにして、首だけを動かして目で追って見てしまった。

 それは、スピードがあるので、前から見ようとしたのに、すぐに背中になってしまった。

 多分、肌の色から日本人ではないと思ったが、外人にしては小さなお尻と細いウェストでスタイルが良かった。

 「フランス人なのかも知れない」と勝手に思ってしまった。

 「通り過ぎたのは、何だったのだろう?」

 みんなも見ていると思い、誰でも良かったので声を掛けようとして隣を見たら、誰も気づいていない。

 相変わらず、前屈みになって真っ直ぐに歩いている集団に変わりはなかった。

夢でも見たのか? もう一度振り返ったが、姿は消えていた……。


   ж


月曜日の朝も見てしまった……。

気づいた時には歩道をインラインスケートでこちらに向かって走ってきていた。

 何故か心の鼓動が、激しくなったが、すぐ横を通り過ぎて行った時には、急激に鼓動は納まってしまった。

見なければ良かったのかも知れない。

今年の夏は終わった……。
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