僕様王子に全てを奪われて
有栖川が教室にある掛け時計に視線を送った

…え?

…はっ

授業が始まっていからもう…2時間も過ぎているの?

私、そんなに花をいじってた?

「冴子さんが、クーラーを止めて帰ったから…暑くて…」

有栖川が懐から扇子を出すと、扇ぎ始めた

え?

もしかして私が生けている間、ずっと扇がずに待っててくれたの?

私の集中を妨げないようにするために?

そういえば、確かに暑いや

Tシャツの中で、背中から汗が落ちていくのがわかる

有栖川は暑いのが苦手なのに…

1時間以上もクーラーなしの環境で、じっと待ってたの?

別に

そんな…待たなくていいのに

終わるころを見計らって、いる場所を教えるメールさえくれれば…それでいいのに

なんで?

「このお花、持ちかえりましょうね
それと、デジカメに収めておかないと、ね
あ…あと携帯も…」

有栖川は、額から汗を流しながら、携帯で写メを撮り

デジカメで写真を撮り…それから花を大事そうに抱えて教室を出ていった

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