僕様王子に全てを奪われて
「あの…さ」

教室を閉めている有栖川の背中にむかって、私は声を投げた

「なんですか?」

ドアの鍵を閉めながら、有栖川が返事をしてくれる

振り向く気配はなさそう

「有栖川…家に帰ったほうがいいよ」

「はい?」

鍵を閉め終わった有栖川が、眉間に皺をよせて振り返る

「マンションにずっといるから…よくない噂があるって…聞いたよ」

「飯島さんから聞いたんですね?」

「まあ…そうだけど」

「よくない噂なんて…どんな生活をしていようとも一つや二つ…必ずあるものです
愛子さんが気にすることではありませんよ」

有栖川がほほ笑んだ

でも…家に帰らないのは、よくないと思う

「愛子さんは僕がいないと生きていけないんでしょ?」

有栖川が、私の腰に手をまわしてにっこりと笑った

「そ…それは食事面において!
きちんと食べるモノの面倒さえ、見てくれれば…別に…」

「僕がいなくてもいいと?」

「まあ…その…」

なんで…私が責められるのよ!


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