僕様王子に全てを奪われて
『あ、僕だけど』

気まずそうな声が耳に入ってくる

「うん、何?」

『小山内先輩を知ってるの?
さっき連絡先を教えるように言われたんだけど』

あ、そうだね

そうだった

勇人さんねぇ

忘れてた

有栖川のことばっかり考えてて

「知ってるよ
…夕方、知り合いになった」

『そう、なんだ
なんで?』

「え?」

『莉子のお兄さんだって知ってて?』

何、それ?

私、疑われてる?

莉子さんを陥れるために近づいたって思われたの?

竜ちゃんにそう思われるなんて考えもしなかった

私、そこまで性格の悪い女じゃないよ?

でも竜ちゃんにはそう見られてるってことだよね?

私の左手が自然と口元に寄った

無意識に爪を噛む
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