僕様王子に全てを奪われて
「今夜はここで過ごしなさい
いいわね」

「嫌です」

僕は母の横を通り過ぎた

「聖一郎!」

「僕は僕です
父とは違いますから
好きなように生きます
きちんと華道を後継し、母上が望んだように滝沢家を華道界から追い出しました
これ以上、僕に何を望むのです?
もういいでしょ?
母上は、何でも多くを望みすぎかと思いますよ」

僕は玄関に向って歩き出した

言ってしまった…母上が傷つくとわかっているけど…

もうこれ以上は無理…

自分の気持ちを偽るのは、きついよね

愛子さんの花に惚れて…それだけではもう無理なんだ

花だけでいい

彼女の生けた花さえ見られていれば…そう思ってた

きっと母上の言うとおり、滝沢家には良い女なんかいないと心のどこかで思っていたから

父を腑抜けにして、早死にさせた

母の言葉を借りるなら、生気を吸い取られて寿命が縮んだ

才能はあっても、男女の関係には淫らで…わがままで
気に入った男を食う

男が喜ぶ方法を知っている

それでいてずる賢いかと…でも、違ったよね

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