僕様王子に全てを奪われて
近づけば、痛いのは嫌だって騒ぐし

キスマーク一つつけさせてくれないし

僕が嫌なのかと思って、距離を開ければ…大泣きしてるし

全然、違うよ

愛子さんは、僕が想像していた女性とは違う

母上から聞いた滝沢家の女性像は違う

母上は、何も知らない

知らないまま、父を独占し…嫉妬し

父に窮屈な生活を与えた

もともと父は、婿入りした身だから肩身も狭かったし、母には頭があがらなかった

強い母

権力のある母

逆らえない母

そんな元にいたら、父だって…と思うよ

僕だって、父と同じ男だからね

父の気持ちがわかる

「飯島、どうにかしなさい!」

母上の声が、背後から聞こえた

「は、はい…頑張りまーす」

僕を追いかける飯島さんの声も耳に入った

僕は鼻で笑うと、足を速めた

「頑張る気、あるんですか?」

「あら私は、恋する乙女を応援するのが好きだからぁ…
奥様はもう乙女じゃないしね~」

「…だと思いました
そういえば電話はまだ通話中なんですか?」

「あら? そう言えば…切ってたわ」

僕はくすと笑うと、靴を履いて車に向かった
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