僕様王子に全てを奪われて
『い…飯島さんっ! なんでこんな…ってなって格好をしてるんですかっ』

ドアの向こうから、有栖川の声が聞こえた

え?

冴子?

もう来てるの?

早過ぎじゃない?

『いやあ…暑くて…お二人のことを考えると申し訳ないとは思ったんだけど…
昨日は車の中が暑くて…汗をかいたので、シャワー借りましたから』

昨日?

車の中?

暑い?

シャワー?

どういうこと?

車の中で有栖川と…てこと?

『だからってそんな格好で!』

どんな格好?

『えー、聖一郎さんが起きたら…
ていうか、ふふん…が終わって満足顔で出てきたら
…服を借りようかと思って待ったのに
全然出てこないから…さあ…』

『さあ…じゃないですよ!
部屋から出てきたのが、愛子さんだったらどうするんですか!』

『それはないでしょう
だって、聖一郎さんのテクに今日一日、腰が立たない…』

『申し訳ないんですけどね
今日一日立たないのは、僕のほうです』

『ええ?
失敗ですか?
デキなかったの?
こんなに浴衣が乱れているのに…身体に痣まであるのに…成功してないの?
ああ…俺のくそ暑い車中生活の意味が…ない』

俺?

今…冴子が『オレ』って言った?

言ったよね?



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