僕様王子に全てを奪われて
「お邪魔しまーす」

私はスリッパをはくと、そろそろと居間に入っていった

「藤城、莉子なら部屋にいる」

「はーい、それって許可が下りてるってことで?」

「無許可だ」

「…了解です…」

私は振り返って、がっくりと肩を落としている竜ちゃんの背中を見送った

「あいつは鬼畜だ
俺の許可がない限り、莉子を抱くこと禁じてるんだ」

「え?」

そんなんで竜ちゃんは耐えられるの?

「少し前にね
莉子ちゃんの生理がこなくて、大騒ぎになったの
だから…勇人さんが怒っちゃって」

桃香さんが説明してくれた

「はあ…竜ちゃん、莉子さんにはもう本能全開って感じだったもんなあ」

「お前がどうにかしろっ」

勇人さんが私に向って指をさす

「はい? 無理ですから
…て、だってもう何の接点もないし」

「元許婚の立場を利用しろ」

「嫌だ
くっだらなぁい」

私は勇人さんに前に言われた言葉の真似をしてみた

桃香さんがぷって吹き出すのが聞こえた
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