僕様王子に全てを奪われて
じぃっと教室を窓から見つめていると、ふと有栖川と目が合った

有栖川の目が優しくなる

少しだけ口を緩めて微笑んでくれる

その仕草が嬉しかった

教室内にいる女性には気づかれないように、私に笑いかけてくれる

それだけで、心が温かくなった

有栖川…

私、有栖川が好きかも

「ちょっと、見学者さあん」

背後から肩を叩かれた

私は振り返ると、冴子が立っている

「はあい…」

私は苦笑した

「そこで見惚れられると困るんですけどぉ?」

「あはは…って!
そうそう、冴子っ、私の味方になって」

「はい?」

「ある人に…騙されたいのっ!」

「はあ?」

冴子の目が丸くなった

「ちょ…詳しい話は中で…」

私は冴子と一緒に、教室のあるビルに入った
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