僕様王子に全てを奪われて
ワタシの居場所…もう、どこにもないんだ…

「愛子さん?」

車のロックを解除して…すぐにまたロックをかけて有栖川が私に駆け寄ってきた

「どうしたんですか?」

有栖川がしゃがんで、私に視線を合わせてくれた

有栖川の和服が、コンクリートの地面についた

いかにも高級そうな和服なのに…ちゃんと考えて動きなさいよ

「和服……」

「え?」

有栖川が首を傾げた

「汚れるよ」

「あ…これですか?
気にしないでください」

有栖川がにっこりとほほ笑んだ

気にしなさいよ

高いんでしょ?

それともお金があるから、汚れもたいしたことないの?

一度着た服はもう二度と着ないから…とか?

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