僕様王子に全てを奪われて
私は立ち上がると、有栖川の携帯を奪った

「あっ…」

「もしもし、滝沢です」

正直に言えばいいじゃない!

『え? タキザワって…滝沢家の?
なんで、聖一郎様と一緒に?
だって…あなた、今頃路頭に迷って…』

もしかして……私のすべてを奪っていってるのって有栖川じゃなくて、冴子?

冴子一人の仕業なの?

有栖川はもしかして…冴子から守ろうとしてくれた…とか?

それは都合よすぎる解釈?

「ええ、路頭に迷ってますよ
住む場所もバイトも…すべて失いましたから
だから有栖川を呼び出して、文句を言ってやりました
そして餓死しそうだったので、食事を奢ってもらったんです」

『なんで、呼びだせるのよ』

「ふん、私にだってツテがあるのよ」

『…で? 有栖川の女にでもなる気?』

「それもいいかなあ?って
だって新しいバイト先も見つからないし
誰かさんが手を回したせいね

まだ死にたくないの
生きていくには…そういうのも必要でしょ?
有栖川は私に優しいし」

『ちょっと!
聖一郎様は貴方に同情しているだけよ』

冴子の声が低くなる

ふうん

やっぱりね

今までのは、有栖川のせいじゃなかった

冴子一人の判断で、やったことだったんだ

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