僕様王子に全てを奪われて
「有栖川はまだ…何ですか?
言いかけたなら最後まで言ってください」

冴子は、ふうっと息を吐くと前髪をかきあげた

冴子のストレートの茶髪はさらりのまた額に戻ってくる

「ホントに、何も知らないアナタを見ていると苛々する
ただ守られるだけ、守られて…何もしないでも聖一郎さんからの愛を受けているなんてね」

冴子がキッと私を睨むと、ぷいっと視線をそらした

「聖一郎さん、どんなに惨めだったかしらね
藤城家に捨てられた用なし女を引き取るなんて…だから自宅に貴方を連れて行けないのよ」

惨め?

有栖川が?

ちょっと待ってよ!

惨めなのは私でしょ?

有栖川家にすべてを奪われて、働き口も住むところまでも…失って…

全てを奪われた男の元で、生活をしている私のほうが惨めじゃない

一人で生活すらさせてもらえないのよ?

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