僕様王子に全てを奪われて
「私が何の見返りもなく、聖一郎さんの傍にいるとでも思ってたわけ?」

「そこまでは…思ってない、ていうか…給料をもらっているだろうし」

「そうね
金銭関係の他に、男女の関係でもあったわ…

私と許婚になる前は、聖一郎さんはアナタと…ていう噂があった
実際、有栖川家と滝沢家は懇意な仲にあった

でも滝沢家は、藤城家に娘をやろうと決めた
有栖川家は仕方なく、飯島家の私と…って
仕方なくよ……し、か、た、な、く

どんなに惨めだったか
だから私がいなければ、有栖川聖一郎が大きくなれないとわからせてやったわ

なのに…アナタが藤城家に捨てられたってわかった途端、聖一郎さんの態度が変わった

もともと聖一郎さんは、アナタの才能に惚れていたもの
わかってたけど…笑顔で受け入れられるわけないでしょ?」

『ごめん…僕にはそれしか言えないよ』

竜ちゃんに言われた言葉が、蘇った

ああ、こういうときの人って陳腐な言葉しか生まれないのね

陳腐な言葉を吐き出すか…

ただ黙って耐えるしか、ないんだね

竜ちゃんも
莉子さんも

私の醜い感情を受け止めて、耐えてくれたんだ

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