Magician Song〜魔術師の唄〜
 
 
であるから、そんな父に褒められることはうれしい。
 
少しだが、自分の力に自信が持てる。
 
 
 
通常魔法も使えない落ちこぼれでも、ここまでできたのだ――と。
 
 
 
静かにコップに口を付け、透明な水を口に含む。
それをこくっと飲み込み、リアはほぅっと息をついた。
 
 
 
――前々から思っている、疑問がある。
 
 
 
通常魔法は元素の力を借りて、それに自らの魔力をわずかに込めて実体となる。
 
それは特殊魔法よりも、魔力の消費は少ないのだ。
 
 
 
――それなのに、自分は。
 
 
 
特殊魔法を使うことができるのに、通常魔法は使えない。
 
 
 
それが示すことなど、嫌でもわかる。
 
 
 
 
自分は、「落ちこぼれ」であるということ――。
 
 
 
 
「……リア、大丈夫か?」
 
 
「…え?…あ…、大丈夫。ちょっと、考え事してただけ…」
 
 
心配そうに顔を覗き込んでくる父に、リアは顔を強張らせながら笑みを作る。
 
それを目にした父が眉を寄せるが、気に止めない。
 
 
そのまま一気に水を口に流し込み、しっかりと飲み込んだ後、父にコップを返した。
 
 
「…ごちそうさま。…あたし、先に部屋に戻るね」
 
 
そう言って薄く笑い、リアは逃げるようにその場を後にした――…。
 
 
 

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