Magician Song〜魔術師の唄〜
ひらひらと手を振り、出ていく父を見送ったリアは服選びに専念した。
衿の付いた長袖に、デニムのぴったりとしたショーパン。
引っ張り出した服をじっと眺め、リアは思案した。
今日はいつもより少し暖かめであるから、この格好は寒くはないだろう。
それにこの後父の稽古があるから、身動きが取りやすいものの方がいい。
………。
「…いっか、これで」
小さく呟いて、リアはいそいそと服を脱ぎ出した。
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「遅いぞリア!腹が減りすぎたら、父さん死んじまうんだぞっ!」
出てってから5分も経ってないだろう。
胸の内で軽くつっこみ、リアは苦笑した。
服を着替え終わったリアは、急いで自分の部屋を出て来たのだ。
……が。
「…っう…っう…!お前は、父さんが死んじまってもいいんだな…っ!…とーさんは悲しい!!」
片手で拳を作り、もう片方で顔を覆い。
そして、そのまなじりから零れ落ちる、キラリと光るそれ。
「………」
ああ。
どうしてこの人は、こうも自分を腹立たせることがうまいのだろう。
だが、いかにも嘘っぽいそれは、実は本物だということを知っている。
だから、無下に怒ることも出来ないのだ。
そう。
続に言う、ガラスのハート。
………。
いや、少し意味は違うだろうが、気にしないことにしよう。