Magician Song〜魔術師の唄〜
ふぅと小さくため息をつき、リアはちらと肩を震わせている父を見た。
こういう時。
リアの母直伝の「機嫌を直す方法」がある。
こういった状況の中、いつもあの母は使っていた。
こういう状況でなくとも絶対に使いたくない方法なのだが、まぁ致し方ない。
使うしかないのだろう。
一度大きなため息を吐き出し、リアはちょんちょんと父の肩をつついた。
「……父さん」
「…っうっう…う…っ」
リアの呼び掛けに返事はしないが、顔をこちらに向けてくる。
その顔にはもはや、先の豪快さはかけらもない。
しかもこれほどに大きい図体で涙している姿ははたから見て、見苦しいものでしかない。
そのことに思わず苦笑を浮かべたリアは、父の頬に顔を近づけた。
そして。
…――ちゅ。
父の頬に軽く口付けて、すぐに離れる。
そして、そのまま父の視界に入り込み。
「……ごめんね?」
目を丸くした父に小さくそう謝れば。
「…っ…!!…リアーっ!!」
がばっ!と父に抱きしめられる。
これで終わり。
父は母を溺愛していたものだから、いつもこうして父の機嫌を直していたのだ。
ああ。
内緒よと呟いて、おもしろそうに自分に教えてくれる母が、目に浮かぶ。