【 LOVERS 】
繭が仕事に出かける時、
僕は玄関まで見送っていた。

いつものように?


今日で最後のお見送り・・・
僕は繭と笑顔で別れると決めていた。

僕が泣いたら繭がくれたこの1ヶ月は、意味
がなくなってしまう。



『いってらっしゃい♪』

今日で終わりだと知っているのにいつものよ
うにそう言い、送り出そうとする僕に繭は振
り返って、いきなりこんなことを訊いてきた。

「稜が抱く側になるのは・・・オレとのHだ
け?」

『・・・ん?そうだよっ。知ってるでしょ?
僕は受け専のネコだから♪』

と笑う僕に

「・・・結構ウマかったよ」

と言い、繭がクスッと笑うから

『結構ねぇ~』

と不敵な笑みを浮かべてみせた。


ドアに手をかけた繭を引き寄せ、

『繭・・・忘れ物・・・』とKissをした。


最後の儀式

繭は僕の胸に手をあて下を向いたまま

「・・・稜・・遅刻するから」

と僕から離れ後ろを向くと

「・・・・・・っ・・・また・・・ね・・・」

とドアを開けて出て行った。


・・・繭?!
泣いて・・・た?

追いかけたかった。

でも・・・


ドアに手を振れそっと背中をつける。

外にはまだ繭がいる・・・


同じように繭も悩んでるの?

ただ別れが寂しいだけなの?


泣きそうだった。

でも必死に我慢してた。


息を殺してその瞬間を待つ

コツ―コツ――

と歩き出した繭の足音を聞いた僕は、背中を
つけたままズルズルと下に座り込み

堪えていた涙を解放して、ただただ泣いてい
た。

『・・・繭・・・っ・・・・繭・・』

笑えてたよね?

大丈夫だよね?


大好きだよ・・・繭・・・



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