【 LOVERS 】
僕は、自分の膝をかかえて子供みたいに泣
いていた。

僕をがんじがらめに縛っていた鎖が解けてい
く。

――まるで春になって雪が溶けていくように
優しく優しくゆっくりと繊細に・・・
ほどけていった。


この1ヶ月はそのためのもの。

繭は僕の苦しみがわかってたからあんなこと
を言ったんだ。

そして繭は最初から気づいていたかもしれな
い。

それを僕に教えてくれたんでしょ?

1ヶ月の間に僕の心も、体も癒されていた。


売りをやったことも

繭を金で買ってしまった自分も

嫉妬心も

欲求も


全部・・・全部浄化されていた。


奈央さんの言ったように僕と繭は似ている。


あの目を見て僕は惹かれた。

僕と同じ目をした繭が気になってしかたがな
かった。

・・・『愛してる』と言いたかったんだ。


繭と一緒にいても楽だったのは、自分と同じ
だから・・・自分と一緒に暮らしてるみたい
だったから。

僕たちの関係は複雑で

―友達?

―恋人?

―家族?

・・・兄弟?というより双子に近い。


同じ1つの生き物のようなもの。


決して交わることのない線路のような・・・

でも、一生離れることのない特別な大切な
関係。


繭はやっぱり大人で、僕がいてあげなきゃダ
メだなぁ~なんて思ったこともあったけど、
本当は繭が側についていてくれたんだよね
・・・僕のために。

わがままにつきあってくれてたのは繭の方
だったんだ。

繭は「愛してる」なんて言わなかったけど、
それは紛れもなく愛情だとわかった。


恋人になんてなれなくていい。



僕は【 愛人 】だった。

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