【 LOVERS 】

予感

その日の僕は
ちょっと不機嫌だった。

「稜がいれば他に
な~んにもいらない♪」

と小さな稜くんを抱きしめて、
ホッペに「ちゅう♪」
と音が出るくらいのKISSをして
優しい目で笑う奈央さん。

今日の昼間に会ったばかりだった。
あれから時々奈央さんとは
会っていたけど

僕に恋愛感情がないと言えば嘘になる。

でも、彼女をみてると

ないんだろうな・・・

としか思えないぐらい、
彼女の愛情はすべて息子の
稜くんに注がれていた。


『チッ』
自然に舌打ちがでていた。

別にずっと奈央さんだけを
想い続けたわけじゃない。

東京に来て3年の間に彼氏も
いたし、特定のセフレもいる。

ただあの時みたいに本気で
人を愛することがなかっただけ・・・

『ハァ~・・・むなしい・・』
声に出して言ってみると
さらに空しくなった。


一度でも人を
本気で好きになったら

それ以上の人を求めたり、
それ以下の人は
どうでもいいように
思えてしまうのは



僕だけだろうか・・・?

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