【 LOVERS 】
この夜は11時をまわっても
週末という事もあって

店はすごく忙しかった。


ゆったりとした濃いグレーの
1人掛けのソファー。

一度座ったが座り心地がよく
長時間でも座ってられる。

一枚板のローズウッドの
テーブルは重厚感あり、
高級なイメージを更に演出していた。

この店のお気に入りな点は、
バーカウンターから360度店内が
見渡せること、

カウンターの天板には
直径10cmくらいの丸が60cm
感覚で並んでいて照明が
下から照るようになっている。

そこに炭酸の入ったカクテルを
置くと、下からの光と泡が
浮かび上がりすごく幻想的で

時々オーダーもないのに
炭酸水をタンブラーに入れては
ただ眺めていた。


オーダーが入り、
カウンター内にある足元の
冷蔵庫に手を伸ばして、
グレープフルーツを取り出そう
と少し屈んだ状態になった時、

『いらっしゃいませ』

目の前を通る団体客に
一応声をかける。

調度目線がお客さんのグラスに
かぶった時、その光の泡の中に・・・

ん・・・?

急いでその方向に目をやると
後姿が見えた。


華奢だな・・・

女・・・じゃないよな?



ちらっと一瞬見えた横顔が

綺麗だったような気がした・・・


カウンターからよく見える席に座る。
残念なことに僕に背を向けて
その彼は座ってしまった。



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