【 LOVERS 】
『・・・繭』

僕の方に繭が近づいてきて

「こんなとこで何してんの?」

と少し驚いた顔をして僕に訊く。

それをそっくりそのまま
繭に返したい。

『朝の散歩。』
とありえない僕の返答に

「やっぱり稜って変わってるね」
と繭の口角が少し上がる。

『・・・繭は仕事の帰り?』
とわざと訊いた。

「えっ?」
と一瞬驚いた顔をした繭に
そのまま僕は

『繭って・・・売りやってんの?』
とストレートに訊いていた。

「売りって・・援助交際のことを
言ってるの?」

言い方なんてどっちだっていい・・・

何も言わない僕に察したのか、
繭はそのまま表情も変えずに

「あぁ、やってるよ」

とあっさり認めた。

僕は繭の顔を見てられなくなり
目を逸らしてしまった。

「いつかバレると思ってたよ。
稜は、援助交際してるオレを
軽蔑した?」と訊いてくる。

『ん~ん、ちょっと驚いただけ!
軽蔑なんてしないよっ。
僕も昔やってたから(笑)』

何で笑ってるんだろう・・・

「稜はそういうと思った。
他人のことに無関心だもんね」

と言いクスッと笑う繭。

『うん、繭が何してても
関係ないよ。』

繭はちがう・・・

「稜・・・何か顔赤くない?」

繭のひんやりとした手が
僕の頬に触れる。

あっ・・・泣きそう

スクッと立ち上がり

『やばい、熱あがってきた!
帰んなきゃ!!』



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