【 LOVERS 】
前に一度、奈央さんの話を
したことがある。

ゲイの僕が好きになった
女の人に興味があると言って
紹介しろと騒いでいた。

『チッ・・・』
舌打ちする僕。

「稜ちゃん??
ねぇ~稜ちゃんお腹空かない?
讃岐うどんだよっ!
鍋焼きうどん!鍋じゃないけど(笑)
♪何も食べる気がしない~
うどんぐらいしか~♪」

と変な歌を歌ってる。

ブロックを重ねて板を置いた
即席のテーブルにイスはタイヤ。
奈央さんと一緒にうどんをすする。

懐かしいなっ・・・

『稜くんは?』
と訊く僕に奈央さんは
気にさせないように

「うん。お母さんに預けてきた。
稜もうどん大好きでねっ
「ママちゅるちゅるわ♪」
ってよく言うの(笑)
稜ちゃん助かったよね。
今、稜いるからご飯
作るようになったけど
香川にいた頃、樹もほとんど
いなかったから料理なんて
全然しなかったもん(笑)
LUCKYだね♪
あっ?はいお茶ねっ」

奈央さんが注ごうとした
コップに手を添えようと
して僕は手を止めた。

ロンTからでた手首に跡が
僕は袖をひっぱりそれを隠した。


奈央さんは何も聞いてこない。

そのかわり僕を笑わせようとする。


その後ベットに戻った僕は、
奈央さんに聞いていた。


ずっと聞けなかったこと

ずっと聞きたかったことを


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