【 LOVERS 】
「私ねっ、稜ちゃんと別れた後、
オーストラリアに行ったの(笑)
樹と出会った所、
樹との思い出の場所に・・・
・・・本当は死にたかったのかな。

AUSの海をずっと眺めてた。
ゴールドコーストってとこ
なんだけど、海が青くて、
空も青くて、砂浜が真っ白で
歩くとキュッキュッて音がするの。

初めは勝手に死んだ樹に腹が立った。

そして、樹を裏切ってしまった
自分に腹が立った。」

『奈央さんは裏切ってないよ!』
とついつい口を挟んでしまった。

だって一度も奈央さんは
僕に好きだとか愛してるとか
言ったことはなかったから、
Kissしたのも樹さんが死んだと
聞いた後だったし、それ以上は
何も・・・


奈央さんは一瞬笑ってまた
話し出した。

「私はね。自分の中にルールが
あって、規則とかよく破って
たんだけど(笑)
自分の決めたルールだけは
破ったことがないの。

でもそのルールを破ってしまった
自分を赦せなかった。

何日も何日も海だけを見てたの。
海が大きくって、広くって
自分の存在が小さく感じた。

そんな時ねっ。
小さな金髪のくるくるパーマの
男の子が私に近づいてきて、
両手の人差し指を頬につけて
上に上げてるの。

AUSの子供の中で流行ってる
遊びなのかと思って、
マネしてたらその子が
『Don't forget smile 』
て笑顔を忘れるなって(笑)
口角をあげろってこと・・・
私、涙がポロポロでちゃって
泣きながら笑った。」


奈央さんはその後にお腹に
赤ちゃんがいることを知って、
生きろって言われた気がしたと
話してくれた。


そして・・・
< 79 / 143 >

この作品をシェア

pagetop