【 LOVERS 】
「私ね・・・わかったの。
どんなに稜ちゃんが好きでも
一緒に居たくても、
最後に選んでしまうのは
樹なんだって。
今は一緒にいないけど、
結局、樹もそうなんだと思う。

だから、稜ちゃんを選べなかった。
そんなことしたら稜ちゃんが
傷つくと思って・・・
でも、結果的に傷つけてたんだね。
ごめんねっ。稜ちゃん・・・」

と奈央さんは僕の顔を見た。

『うん。わかった』
奈央さんの答えに僕は納得していた。

「稜ちゃん・・・稜ちゃんには
わからないかもしれないけど、
私は稜ちゃんに幸せになって
欲しいと思ってる。
そういう愛情もあるんだよっ」

わかってる

わかってるよ・・・

僕も奈央さんに幸せになって
欲しいと思ったから・・・

僕は布団をかぶって泣いてしまった。

奈央さんはまるで稜くんを
あやすように布団に手をあてて
僕の体をトントンと軽くたたきながら

「稜ちゃん・・・言葉って
難しいよねっ。
自分がそういう気がなくても
相手を傷つけちゃうことって
あるから・・・
人の気持ちって複雑だし、
恋愛なんてもっと難しい!
でも・・・稜ちゃん負けないでね。
愛してるよ、稜ちゃん」


僕はその言葉を
ずっと聞きたかった。

稜くんの名前を聞いたとき
愛されてると思ったけど
その言葉が
ずっと欲しかったんだ。


愛されたという証が欲しかった。
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