【 LOVERS 】
『あっ……、
あの…繭…気づいた
んだけど、売りは
したけど買ったこと
なくて…いやっ買った
とは思ってないんだ
けど…でも繭は…
あれ?
…何言ってんだろ?』

言いたいことが
自分でもよくわからない。

そんな僕を見て繭は
緩く口角を上げて笑い、
フッと立ち上がったかと思うと
僕の近くに来てバーボンの入った
グラスを手に取り、口に運ぶ。

繭は少し飲んで
グラスをカウンターに戻した。
そのグラスの
上の部分を綺麗な指で
なぞりながら

「みんなオレを愛して
くれたよ。稜…
稜はオレのために
何してくれるの?」

と妖艶な笑みを
浮かべて僕を見ていた。

『何でもするよ…』

「何でもって?」
繭がクスッと笑う。



『何でもだよ(笑)
繭がして欲しいこと。
何でもしてあげる…』

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