左の草履
プール開き
「オーイ靜人ー!更衣室行こうぜ」
「あー、うん」
僕はほがみをしながら返事して、机の横のプールバッグを取る。
季節は夏。
僕らの学校は7月からプール開きだが、今年はいつになくみんなが興奮していた。何故ならば。
「おーいお前ら間違えるなよー、今年から大プールだからなー」
ハーイ!と返事をして、クラスのみんなが嬉しげに騒つく。担任の高橋先生が、やれやれと頭を掻きながら教室を出ていった。僕は何となくそれをぼーっと見ていたが、後ろから激しくタックルされて我に返った。
「おい靜人おせーよ!なにぼーっとしてんの、早く行こうぜ」
「あぁ、分かった分かった。」
「ったく、ようやく5年からは大プールだってのに、早く泳ぎたくねーのかよ靜人は!」
「あはは、ごめんごめん」
僕は笑ってから、プールバッグの中身を確認した。
僕らの学校は、5年生からは今ままでの中プールを卒業して大プールを使用するという決まりがある。逆に言えば5年生になるまではみんな大プールに入りたくても入れないので、今年の僕らにとってプール開きは一大イベントなのだ。