左の草履
次の日、珍しく寝坊してしまった僕は、いつもより遅く学校に着いた。
急いで教室に入った僕は、教室の異常な静けさを不思議に思った。みんないつものように席を離れて友達同士でいるものの、あまり大きい声で会話をしている人がいない。
(どうしたんだろう…)
僕は不安になった。
「おはよー、靜人」
声をかけられ振り向くと、礼二くんと健太郎が立っていた。
「あ、おはよう。今日みんなどうしたの?すごい元気ない…」
「し!」
いきなり二人が口の前に指を一本立てたのでびっくりすると、同時に腕を引っ掴まれて教室の外にUターンさせられた。何がなんだか分からない。
教室を出てすぐの柱の影に来たとき、二人はようやく僕の腕を離した。
「ねぇ、二人ともどうしたの?てか教室のあれ…」
「和希と倉田がケンカしてるんだ」
と、健太郎が僕の言葉を遮って唐突に言った。僕は首をかしげる。
「そんなの、いつものことだろ?」
「いや、それが…いつもより数倍質が悪いんだよ。倉田のやつが、和希を無視してるんだ。」
僕は息を呑んだ。