左の草履
「昨日、僕が口を挟んだせいだよ。多分その時倉田さんを傷付けたんだと思う」
すると、礼二くんはないないない!と手を振った。
「考えすぎだよ靜人は!つか昨日のあれはどう考えても倉田が悪いよ。あそこで靜人が止めてなきゃ、和希絶対キレてたもん」
「そうだけど…」
「たんに倉田、ちょっと反省したんじゃねーの?」
と、健太郎が静かに言った。
「だってさ、俺初めて見たよ。倉田が誰かに謝ったの」
「確かにそうだな」
と礼二くんは目を丸くしてうんうん頷く。
健太郎はぽんぽんと僕の肩をたたいた。
「気にすんな。今はこんなだけどどうせあいつらすぐまた元に戻るよ。それまで俺らも大人しくしとこうぜ」
僕はなんだか腐に落ちないながらも、うんと頷いた。
多分倉田さんは、僕にあんなことを注意されて本当に嫌だったんだと思う。だって、多分倉田さんは和希のことが好きなんだから、喧嘩を吹っ掛けた理由も分からない僕のような奴にどうこう言われたのが腹が立ったのだろう。
(好きなら、優しくすればいいのに…)
僕にはやはり、好きなのに喧嘩する意味が分からない。
きっと、一生理解出来ない。