左の草履
バッグの中身を確認し終えた僕は、友達の和希にごめんと謝って教室を出ようとした。振り返った僕は、目の前に和希がいないのであれ?と目をしばたいた。
しかし、女子の大声がしたので、僕はすぐに理解した。
「和希、あんた男子のくせになんでまだ教室にいんのよこの変態!」
和希の首根っこを掴んでそう怒鳴っているのは、クラスで最も身長の高い倉田さつきさん、通称ゴリラ女さんだ。命名したのが和希だから、非常に質が悪い。
「な、変態じゃねーよこのゴリラ女!てめーは何でそんな自意識過剰なんだよ!」
負けじと和希が言い返すと、ふんと荒く鼻息を漏らして倉田さんは笑った。
「どうかな、バ和希!あんたこの前優子ちゃんのパンツ、階段の下から覗いてたじゃんか」
すると和希がビクリと肩を上げた。僕は、(あ、本当なんだ)と内心呟く。
和希はオロオロと目を泳がせて叫ぶ。
「なっ、ちげーよ馬鹿!あれはオメー、優子がスカート短すぎるから…」
「ほーら、やっぱり見たんじゃん!変態!」
満面の笑みで勝ち気に叫んだ倉田さんを筆頭に、その他の女子がえー、最低!とかマジありえねーとか騒ぎだした。僕は、そろそろ収束つけなきゃ、と倉田さんの元へ走った。