左の草履
「ごめん倉田さん!」
僕が大声で謝りながら走っていくと、倉田さんは目を丸くしながらえ、と呟いた。
「違うんだ、和希は決して倉田さんが思ってるようなことで教室に残ってた訳じゃなくて…単に僕がカバンの中身確認してるのを待ってくれてただけなんだ、僕のせいなんだよだから…」
そこで一旦間を置いて、僕は笑った。
「和希、降ろしてやって?」
区切りながらはっきりいうと、倉田さんは顔をほんのり赤くして和希の首根っこからパッと手を離した。ドサッと音がして、ウッと床で呻き声がしたが、僕はそれを無視して微笑んだ。
「ありがとう」
すると、倉田さんは尚も頬を真っ赤に染めて「べ、別に…」と言った。僕はその言い方や顔の赤さに(怒らせたのかな?)と少し不安を抱いたが、別段表情には出さずに和希の服を持って持ち上げた。
「ごめん和希、遅くなって。行こう」
「お、おぅ」
和希を半ば強引に引っ張りながら僕達は教室を後にした。
僕は気付かなかったけど、僕等が教室を出る瞬間に倉田さんがうつむきながら僕に何か言ってたらしい。
それから、僕等が出ていったあとも暫らくは教室が静かだったのは、それと何か関係が有るのだろうか。
僕にはよく分からなかった。