左の草履
僕はキッパリとそう言われて何だか少し腹が立った。
「じゃあ、誰から僕はモテモテなの?はっきり言えよな」
「そうだよ和希、焦らすなよな!」
「そうそう」
と、3人から責め立てられた和希は、やれやれとわざとらしく言って、口の端をニッと釣り上げた。
「倉田だよ、倉田さつき。あのゴリラ女」
「…ねぇだろ、それは。」
しばらく無言の後、そうポツリと呟いたのは健太郎だった。
「あぁ、確かに多分倉田は…」と礼二くんも腕を組んで呟く。
「え、いやこれ本当なんだってば!嘘じゃねぇよ!」
必死に和希がそう言う隣で、一人考え事をしていた。
僕は、礼二くんと健太郎がなんで「倉田さんはない」と言うのかも疑問だったが、しかし一番疑問だったのは「僕が倉田さんからモテモテ」だというふうに言われたことだった。どう考えても理解できない。
だって、僕はさっきの会話が、倉田さんと初めて交わした会話だったからだ。
「ねぇ、和希。なんで僕が倉田さんからモテるの?訳分かんないよ」
すると、和希はくるりと振り向いてあー?と眉根を寄せた。