左の草履

「は?なんでそれ…」


「私あんたの後ろの席だから、たまたま見えたんだよ。あんたあんな簡単なテストでよく28なんて低い点数とれたねぇ!あんな低い点数、馬鹿しか採れないじゃん、だから馬鹿っていったの!」



と言って笑った。






(言い過ぎだよ、倉田さん…)


僕は、悲しくなった。
倉田さんの言い方は、冷静に見ていれば冗談半分だと分かるものだった。
ただ、冷静じゃない和希からしてみれば、あれは最悪だ。
絶対、キレる。



僕は立ち上がって、わなわなと震える和希の肩に手を置いた。


「和希、さっき高橋先生が、昼休み職員室来いって言ってただろ。あれ行かなくていいの?」



和希は「うん」と小さく返事して、てくてく歩いていって教室のドアを開けようとした。
しかし、くるりと振り向いて、大声でゴリラのバーカ!!といって、走って出ていった。




「な、馬鹿はお前っ…」



「言い過ぎだよ、倉田さん」




僕は静かにそう言った。倉田さんがびっくりしたようにこっちを見る。

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