左の草履
「倉田さん、いくらなんでも言っていいことと悪いことあるよ。あいつ、自分のテストが悪いこと気にしてるんだ。だから、言ってやらないで」
そう言うと、倉田さんは顔を真っ赤にして唇を噛んだ。若干顔をうつむきながら、小さく「ごめん…」と言った。
「それ、僕じゃなくてあいつに言ったあげてよ。そのほうが」
「それだけは嫌!絶対!」
倉田さんがあまりの剣幕で言ったので、僕は耳がキーンとした。礼二くんと健太郎がうぉっと言った。
「な、なんで?」
僕がおずおずと聞くと、倉田さんは眉間に皺をよせて「なんでも!」と言った。僕はため息をついた。
倉田さんは、それからすぐに教室を出ていった。僕ら3人はぽつんと残され、しばらく黙りこくっていた。
「分かりやすすぎ」
ポツリと健太郎が言った。すると、礼二も「だなぁ〜」と笑った。
しかし、僕は黙りこくっていた。今回、ようやく全てが分かった。礼二くんと健太郎は知っていたのだ。だから、この前和希がああ言った時、二人はキッパリと否定したんだ。
今なら僕もよくわかる。なんでいっつも倉田さんが和希を追い掛けて、喧嘩をふっかけたりするのか。
簡単だ。
倉田さんは、和希のことが好きなのだ。