『遠・距・離・恋・愛』
「相変わらず仲が良いね」


「健吾さんとミキちゃんだって、ラブラブなんでしょ?毎日若菜がお二人のことを話してますよ。羨ましいって。」


羨ましい、か……。


作り笑いをして、俺はタバコを吸おうとポケットの中に手を入れる。


でも、ポケットの中にはタバコも、携帯も、財布もなかった。


肌身離さず持つカメラも持ってなかった事に気付く。


今日の俺、格好悪すぎ…。


「健吾さん、行かないんですか?」


いつの間にか先に行った俊一君が尋ねてきた。


「………」


俺の態度に気付き、俊一君は黙ってミキ達の方を見る。おそらく彼なりにわかってくれたのか、俺の隣に来た。


「頭ではわかってるんだ。ミキとアイツの事は終わったって…。でも身体がミキの方に行かないんだ…」

「バカだよな、俺。」


俊一君は何も話しをすることはなかった。


卒業生達のざわめく声が遠く感じた……
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