シンシア ( l )
 濃茶の建物ダークネスワールドに、どんどん吸い込まれて行った。
客は、目の前の黒いカーテンの部屋で視的感覚を奪われた。
「キャーッ」
「オォーオッ、オッ、オッ」
「何も見えな〜いっ」
「コ〜ワッ」
両手を伸ばして指先だけで探り始める。
(カーテンらしき物・・・・・・!?)
掻き分けて出る。
「うわっ」
突然の強い光が、両目を突いた。
瞬時に目を細める。 右掌で光をさえぎる。
カーテンから出ると先に出た人達が、こちらを見て楽しんでいた。
「いや〜、参りましたねっ」
健もグループに加わり、気軽に見ず知らずの人と会話をし始めていた。
そして、後から出て来た人々を笑顔で向かい入れる。

「うわ〜っ!?」
回りの色々な場所で、同じ声が上がった。
ダークネスワールド内は、白やゴールドをベースにした中世の白を思わせる、高級感のある造りに成っていた。
美術館といっても、いい程だった。

見映えする所で、天井絵、ステンドグラス、古めの地球儀、技術が高度な彫刻があった。
壁や柱には、『ヴィーナスの誕生』や『最後の晩餐』や『バベルの塔』などの西洋絵画や聖画が、そして中央付近には、戦国時の戦っている人形、隣には、拷問の地獄絵図の人形館、また隣には、ドラキュラに例えられた人物達の等身大の彫刻像や頭だけの石像などの歴史物件が、飾られてあった。
そして目的の城は、壁を隔てた一番奥の薄めの黒いカーテンの、その奥に見られるように成っていた。
健は、回りを気にせず、人の間をぬって一番始めに"復元されたドラキュラ城"を見に向かった。

未知の扉、薄黒のカーテン内に恐る恐るゆっくりと歩を進めて行く。 そして・・・・・・抜ける。
「オー、オオーッ。 スッ、凄いじゃん・・・・・・へーっ」
そこには、右にドラキュラ城原寸大の廃墟の城の立体模型が、左には、本物のドラキュラ城跡の土と写真が置かれていた。
目が止まっていた。
魅了させられる。
鼓動が早く成る。
しかし、時の経過と共に脈拍が落ちていく・・・・・・冷えていく・・・・・・黒い瞳孔が動く。
「ふ〜ん・・・・・・。 トイレに行ってこ〜とっ」
向きを変えて歩き始めた。
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