お兄ちゃんの気持ち
「え、歩くんですか!?」

予想外の行動にびっくりして、思わず聞いてしまう。

「そうですよ、頑張って歩いてくださいね。まだ出てきませんからね!」

威勢のいい助産師に支えられるようにして歩くカオリに、俺はどうしたらいいのかわからずに後からついて行くことしかできなかった。

「旦那さん、奥さんの手を握って支えてあげてくださいね」

分娩台に乗ると、足元で助産師さんが何やら処置をしていて。

俺はどうしたらいいのかわからず、カオリの汗を拭ったり痛いという腰のあたりをさすったり。

「うん、全開ですね。陣痛が来たらいきみましょう!」

痛みには波があるというのは、妊娠後期に入ったときに参加した両親学級で聞いていた。

呼吸法も一緒に練習したのに、実際その場になってみると男というのは無力で…。

「うん…ああっ」

「はい、上手ですよ!頑張って!」

俺がいきんでも仕方ないのに、カオリのいきみと合わせるようにして全身に力が入ってしまう。

「はい、楽にして~。浅野さん、上手ですよ!」

そんな感じがどれくらい続いたのか分からないけど、すごく長かったような気がする。

「もうすぐ頭が出てきますよ。旦那さん、見ますか?」

「え!?」
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