お兄ちゃんの気持ち
「名前、考えなきゃね」

ハンカチで涙を拭いながら、ガラスにへばり付くようにして赤ちゃんを見ているカナコ。

携帯で写真を撮って、後でコウスケにメールするんだと笑っていた。

それからしばらくしてカオリも病室へと戻ってきて。

明日有給を取っている俺はそのまま病院に泊ることに。

母さんは足りないものがあるからとカナコと一緒に一旦帰宅して、義理両親はまた明日の朝来るといって帰って行った。

赤ちゃんは新生児室で一晩過ごし、明日から一緒に生活すると説明された。

今夜は、最後の二人きりの時間。

「お疲れ様」

「来てくれてありがとう」

ベッドに横になったカオリに、キス。

立ち会うことで女として見れなくなるとか聞いたことがあるけど、俺は全く逆だった。

全身で出産に挑むその姿はとにかく美しくて。

生まれた瞬間も、元気に出てきてくれた赤ちゃん同様、頑張ったカオリに感動した。

「愛してるよ、カオリ」


今日、父親になった俺。

守る家族が増えて、愛おしい君がますます愛おしく思えるようになった日。


「生まれてきてくれて、ありがとう」


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