お兄ちゃんの気持ち
手にしていたクロスを近くに置いた彼女は、すっと倒れるようにして俺に寄りかかってきて。

俺の胸元に当たる彼女の頬。

いつもより早い俺の鼓動は、これで彼女にばれてしまった。

「キス、してもいい?」

自然とまわした彼女の背中にある自分の手を、そっと彼女の頭の後ろに回す。

ゆっくり俺の胸元から離れた顔が、俺を見上げて小さく頷いた。

再び彼女の頬に触れると、ゆっくりと目が閉じられて。

そっと、触れるように重ねた唇は、俺が震えているのか彼女が震えているのか。

「…好き」

いつからかとか、俺のほうが年下とか。

少しだけ気になっていたいくつかのことが、この瞬間に全く気にならなくなってしまった。

俺よりも少し小柄な彼女を、ぎゅっと抱きしめる。

…愛おしい。
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