他人の恋愛話に興味はねぇ
「ほれ、ほれ、ほれ。
はよ、話せ、恭平ちゃん」

「マジですかー?
洋子さんの前で話すのは抵抗あるなぁ」


綺麗なブラウンに染まった髪を、恭平は照れ隠しにかきむしる。


洋子さんの母親である店のママが
「何やってんだかねー」って顔をしながら
向こうのカウンターで、美味そうに煙草の煙を吐き出した。


「男だろ、男なら話せ!」


洋子さんが恭平の背中をバシッと叩く。


「は~あ、最悪だ。
こんな最悪な日はない」


「観念しろよ、恭平。
秘密にしてたってしょうがないだろう?
洗いざらい喋れ。喋れば楽になるぞ」

きっと誰よりも続きが聞きたい俺は、犯人を自白させる刑事のように、優しく諭すように、恭平を促す。


「土井!
おめーは刑事かっつーの」


「ほれ、恭平、腹減ってねーか?
カツ丼でも取ろうか?」


続くタシロの尋問に
「あははは」と洋子さんの高笑い。


牛のように鈍感な村上だけが
「あ、俺も腹減った。カツ丼食いたい」
と真顔で答えるもんだから、みんな爆笑。


ただ一人、笑わなかった恭平がポツリと。


「俺、普通のセックスじゃ燃えないんだ。
女が激しく泣き叫ばないと。」


笑い声がぴたりと止まり、一瞬にして静まり返った。
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