Strawberry on the shortcakes



夜、音楽番組を観ながら


リビングのソファーに座って
ペディキュアを塗っていると



ケータイが鳴って



通話ボタンを押し

「はい」



「絆~?お母さんだけど」



耳に届いたのは お母さんの声



「お母さん。どうしたの?」



「あなた、夏休みなのに
こっちに遊びに来ないの?」



「……あ~。うん」


夏休みは お父さんとお母さんがいるドイツに行く予定だったけど



ドイツに行ったら完璧に藤代先生と会えなくなっちゃう



例え、ゴミの日に一言、二言、一瞬 会えるだけでいい



ううん、会えなくても



壁を隔てた隣に藤代先生がいる



この部屋に ずっと いたい……



「飛行機のチケット送るから
いらっしゃいよ、絆。
久しぶりに会いたいのよ?」



「……お母さん」



お母さん。
私も お母さんに会いたいよ


お母さんの作ったご飯が食べたいし、キッチンに立つお母さんの背中が見たい



……………でも


「ごめんね。1人でドイツまでって自信ないし
夏休み、友達と遊びたいんだ」


ごめんね、お母さん。


行こうと思えば1人でだって飛行機乗って行ける


でもね、でもね……


私、少しでも藤代先生のそばにいたいんだ



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