Strawberry on the shortcakes



背中に回された力強い腕


顔を埋めた広い胸は


少し前、先生の部屋で夕食をご馳走になった夜


奥さんの話を少し聴いて
泣いてしまった時を思い出した



あの時の先生の腕の中
優しくて懐かしくて


先生が亡くなった奥さんを大切に想い続けるのは素敵だよ



そりゃ、
少しはズキッとくるけど


私は そんな先生の全てに
寄り添い、そばにいる
特別な存在になりたかった…



「ごめんな。キッズ」


修ちゃんは申し訳なさそうな声で何度も謝り


私をなだめるように
優しく背中を撫でた

ズズッ……
鼻をすすってから


「もう、いい……」


修ちゃんに謝られても
虚しいだけだし



修ちゃんの胸から顔を上げて
離れようとした時



―――――――グッ


修ちゃんは腕に力を込めて


私をきつく抱きしめた


「………修ちゃん?」


「キッズ。藤代はやめなよ」


「…………」


やめなよ
そう言われて消せる想いなら
私は今こんなに泣かない



修ちゃんの腕の中
身を委ねて黙り込むと


「キッズが諦めないと
藤代も大変だろうし―――――」


「………修ちゃん
それ、どういう意味?」



私が諦めないと先生が大変って



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