Strawberry on the shortcakes



唇を離して


床にかかとをつけると



私の中には、
もう何も残されてなかった



私が先生に伝えることは


もう何もない



そう思うと切り裂かれるような痛みが身体中を駆け巡り



叫び出しそうだった



先生の顔を見ることも
出来なくて



逃げるように部屋を出た



バンッと化学準備室のドアを後ろ手に閉めると



急にひざから下、力が抜けて



廊下に崩れ落ちるように
両手をついた



廊下の冷たさが
手のひらに伝わると



大粒の涙が込み上げて
廊下を濡らした



次から次へと溢れる涙で


もう目を開けることすら
出来なかった



息を吐く度、嗚咽が漏れて



だけど、ここで声を上げるわけには いかない



中にいる先生に聞こえてしまう



私の泣き声は


先生の胸を押し潰すだろうから



もう ほとんど残されていない


わずかな力を両手にこめて



2、3歩
廊下を這うように進みながら


震えるひざで
ようやく立ち上がり


廊下をよろよろ走った



涙で前なんか見えなかった



とにかく先生から離れて



遠く 遠く離れて



声を上げて泣きたかった



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