Strawberry on the shortcakes
「ねぇ、絆」
お母さんの声が
急に改まったから
私も訳がわからないまま
「何?」と少し緊張して訊いた
「どうやら2月に日本に戻れるみたいなの」
「えっ?」
「ドイツに行く前に住んでた
元の街に戻れると思う
―――――――だから」
ドクン、ドクン、ドクン
「絆は転校することになるから
編入試験のためにも少し勉強しておいてね?」
「………………転校……」
「ごめんね。せっかく、そっちの学校にも友達できただろうに
だけど、また家族3人で暮らせる。お母さん、すごく嬉しい」
「……あ、うん。そうだね」
ケータイを握る手が
感覚を失っていく
電話を切る時
「それじゃあ」と言った口は
からからに渇いて
舌が
上あごに張り付きそうだった
―――――2月
あと2ヶ月で こことお別れ
先生のお隣さんからも
先生の生徒からも
これで本当に全て
先生と私を繋ぐ糸は
断ち切られる
呆然と座り込んだ
リビングのじゅうたんの上
視界の端に映った
テーブルに置かれた
広げた包装紙の上の小さな箱
中に輝くピアス
大人になってからのお楽しみ
私は
哀しいくらい子供だった